タジタジになる私のレースに包まれた手を、獅帥君は自分の口元に近付ける。
誰かの息を呑む音が聞こえた。
「綴を理解したいと思っているから軽いと言った言葉でも、俺の中では誰の言葉よりも重い」
「…」
そして、
「ーーー綴の全てを咀嚼出来るならしたい」
そんな凡人には理解出来ない事を言う。
「…そ、咀嚼?」
言葉を咀嚼するって言う意味で、決して私を。
「きゃあっ」
「嘘…」
呆然とする者、思わず言葉が出る者。
獅帥君は私のレースに包まれた指先を、柘榴の様に熟れた唇に含むのだ。
「…っ」
指先を加えながら、上目遣いで私を見るその目にビリビリと身体中に電気が走るかの様な震えを感じた。
時々獅帥君がソドム以降で見せる私に対しての奇行が、妃帥ちゃんが倒れる前に見せた、あの私を食べてしまいたいと言うモノに見える。
「獅帥、くん」
「…」
人前じゃなければもっと怖ろしい、いやそれこそ禁断の果実を目の前にしたイヴの様に、食べるのを我慢出来なくさせる、そんな妖しい魅力を放っている男に、誰も口を出せずにいた。
ていうか、私の顔の方が今林檎の様に真っ赤だ。絶対。
その時、
「お前ら目立ち過ぎだろう」
呆れた様な火渡君の登場に、救世主!バンザイ!と思ったのは仕方ないと思う。



