獅帥君がゆっくり眠れます様に。
思いを込めて彼に言うと、少しだけ口元に笑みを浮かべて、漸く瞼をしっかりと閉じた。
何にも感じてない訳ないもんね…。
無表情で心を幾ら凍らせても、思う事は沢山あって。
辛い時でも因習を崇める人々達の前ではそれ相応に振る舞って。
辛くない訳ない。
「お疲れ様…」
小声で彼を労る。
寝息を立て始めた獅帥君を眺めながら、どうか彼と彼の妹が少しの間だけでもいいので穏やかに眠れます様に…と祈る。
夢で逢いたい人に会えます様に。
それぐらいは許されて然るべきだと思った。
そんな思いと共に暫くボーッと眺めていれば、
ーーーコンコン。
「はい」
控えめなノックオンが聞こえ、反射的に開いた口を閉じる。
よし獅帥君は起きていないな。
「獅帥様は…」
「しーっカズミさん」
カズミさんがどうやら見に来てくれたらしい。
「お休みに?」
頷く私の言葉に音量を下げてくれる。
不恰好な私(布団に手を入れて椅子に座る)と獅帥君を一巡し、再度獅帥君に視線を固定する。
「本当に眠られたのですか?」
「うん今ね」
「…幻ではなく?」
「うん」
鼾1つかかない獅帥君の顔を覗き込むカズミさんは、信じられない様な顔をしている。
そんなに驚く事か?
「これは妃帥お嬢様お喜びになる…」
感嘆と共に言葉を呟くカズミさん。



