過つは彼の性、許すは我の心 弐



「綴〜」

「わー!考史来てくれたんだ」

「自分でチケット送ったんだろう」


 パーカーにジーンズと言うドシンプルな格好で弟の考史(たかふみ)が、座っている椅子の近くまで来ると(獅帥君見てギョッとしてたけれど)私の姿を見て、


「馬子にも衣装だな」


 と言いながら、写真をパシャリと撮る。馬子とはなんだ馬子とは。


「…部活で忙しいのかなって」


 来るなら両親かなと思っていたし。

 ぷうーと頬を膨らませると、考史が指先で私の頬を押しながら「最近綴周りで色々あり過ぎて心配だったんだよ。本当は母さん達も来たかったんだけど異動で2人とも忙しくて来れないって」と苦笑いする。


「そうなの?」


 会社ではこの時期異動とかあるんだなあと思っていれば「うん父さんは海外勤務で、母さんは都内の本社に異動だって」と寝耳に水の事を言われた。


「ええ!?お母さんはバリバリ仕事しているから分かるけど、お父さんって程々で良いよ〜なんて言ってるぐらいやる気なかったのに?」

「なんか2人とも急に決まったらしい」

「へええー…」


 考史曰く、お父さんの海外勤務も出世街道に乗る為のステップアップの1つであり、元々評価されていたお母さんが本社に呼ばれたのは言わずもがなとか。