過つは彼の性、許すは我の心 弐



 ムッとした表情もまた艶やかで美しく「強制的に病院に行く事になるぞ」と小声で脅されても呆けてしまっているが、本当に分かっているんだよ、これでも。

 ここまで獅帥君が私に過保護なのも理由がある。

 正直1日良く寝たぐらいで、蓄積した調子の悪さは改善されず。

 時々歩いているとふらっとするし、心無しか微熱だし、頭も急に痛むしは変わっていない。

 そもそも今回具合が良くない上で文化祭に出席したいと言った私に、獅帥君が駄目と判断したら速攻病院、と言う妥協の末に今が成り立っている。

 見守ってくれる彼には本当に頭が上がらないんだけれど、顔を近付けられると心臓がバクバクしてしまって顔を逸らすのは許して欲しい。


「こっちを見ろ」

「っ…」


 その時、


「自分なあ…つづちゃんは普通の女の子やねんから、自分の顔近づけんな」


 獅帥君を私から離してくれたのは、バロック風のヴァンパイア衣装を着た渚君だった。


「な、渚君おかえりなさい!」

「ただいまつづちゃん」

「海祇お疲れ〜」

「おう」


 笑うと牙が見える渚ヴァンパイアは、態と古めかしくした黒いシルクハットに、黒いロングコート、赤いクラヴァット、黒いベスト…と燕尾服も似合っていたけれど、こう言うのも良く似合っている。

 文化祭1日目は渚君無双だったらしい。見たかった。


「そうだ、つづちゃんお客さん」


 そう言って現れたのは、