昔の上品なお嬢様を、自分で体現されて素直に感動してしまった。
「うわ…っ」
クルクル回っていたら眩暈が戻って来てグラリと視界が揺れる。
足が縺れたが、すかさず。
「危ない」
ふわりと両肩を抱かれて、見上げればなんと。
「良い仕事したなあお前ら…」
文化祭委員が唸るのも分かる、分かるよ!
「座ってろ」
美術部が丹精込めて作ったアンティーク調の椅子に座らされる。
見上げた彼…獅帥君の出立ちは、身支度出来た彼が教室に入った瞬間、クラス中の時間を止めた。
「無理はしない約束だ」
今の獅帥君はエクステで髪を伸ばして、その毛先を濃藍色のリボンで軽く結び、鉄紺色の着物の中に白い肌襦袢を着て縁が黄色い濃藍色の羽織りに袖を通す。これだけ。
なのに、
「綴?」
破壊力は凄まじい。
2人で某有名アニメーションの美女と野獣を模した、大正時代のカップル想定の格好だが、私負けてない?見劣り凄くない?完全回復していない身体に悪くない?と言う気持ちが溢れ出ている。
「本当に大丈夫か?」
「だい、だいじょうぶ…」
以前の燕尾服も鬼に金棒状態だったが、今も鬼に金棒どころか鬼に…ああ語彙力が無い自分が憎い!
「やっぱり具合が…」
「違う違う!獅帥君がその!」
「その?」
逸らすとグイッと顔を戻される。



