指先を彼女首元にやると少しだけ「ん…」と声を漏らす彼女。
「…」
悪戯心が湧いた。
指をマーキングされた部分から唇の方に持っていき、合わせられたら口の間に少しだけ指を入れる。
すると眉を少しだけぐっと寄せ、
「や…喜影君…」
そう呟かれて理性が一瞬で溶けた。
指先を離して彼女を抱え込み、首元に顔寄せて口をマーキングに付けた。
「んう…」
寝かせてやりたいのに、溶けて出来た本能が舌を動かして、傷の様になった跡を労る様に、上塗りする様に、舐めて吸い付く。
「あ…」
余程深く眠っているのか起きないが、時々漏れる出る声が少しだけ熱を帯びている気がして、本能に火を焚べられる。
少しだけ撫でる様に彼女の身体のラインを撫でると「や…」と甘そうな声が漏れ出る。
「っあ…」
跡の付いていない彼女の白い肌に跡を残せば、彼女の弱々しくも艶を帯びた小さな声にいよいよ不味いーーー…そう思った瞬間、
「獅帥君…」
むにゃむにゃ言いながら、彼女が俺の背に腕を回して更にくっついた。
「…はあ」
寝込みを襲うなんて惣倉喜影以下だな。
彼女を強く抱き締めて目を閉じる。
その日は頭で素数を数えながら寝付く事だけ考えたが、彼女の代わりに俺が眠れなかったのは、彼女には秘密にしておこうと思う。



