妃帥ちゃんをオーフィリアに例えた事があったけれど…。
眠りの世界に誘われている獅帥君の横顔は、穏やか過ぎて逆に不安になる。
美しさと清幽さが伴うと、死を連想するのは何故なんだろう。
歌いながら溺死していくオーフィリア。
彼女は一体何を思い、歌いながら湖に沈んだのだろうか。
度重ねる悲劇に心が窶れたからか、それとも…。
「どうして…」
「うん?」
閉まりかけた瞳が私を見て、
「あの時俺が、」
「うん?」
「ちゃんと、役目を、果たせていなかったから、居なくなったのか?」
「…」
違う。
《《これ》》は私にじゃない。
違う誰かだ。
「だから妃帥も怒ってる」
「…」
……寝言に返すと脳が覚醒しちゃうから返さない方がいいんだよね?
でも本音を言えと言っても全く言わない獅帥君の気持ちを、本人の同意なく聞くのって何か悪い事をしている気分になる。
だからと言って、数分もしない内に夢に入る人を起こすのも忍びないし…ああどうしたら。
ーーーそんな私の葛藤は、
「ちゃんと、出来るから、居なくならないで…くれ」
哀苦に満ちた言葉にアッサリと崩壊した。
「居なくならないよ」
布団に隠れた片手を驚かれない様にそっと包む。
「大丈夫、起きるまで傍にいるから」
「…」
「おやすみなさい」



