耳をギュッと塞ぎたい。
泣いて何処かに引き篭もりたい。
そしたらあの人が見つけてくれる。ぎゅっと抱き締めてくれる。
暗い闇の中でも煌々と輝く存在が。
誰も与えてくれず、普通なら当たり前に与えられているモノ。
あの人が、実の両親すら与えてくれなかったモノを与えてくれる。
でも、あの人は岩戸に隠された。
岩戸の前で踊っても決して出ない、嫌でも出さないだろう。
気持ちは分かる。
自分が同じ立場ならきっと同じ事をしたと思うから。
ーーーするりと紐が解かれた。
「だから、今日も施しを与えて下さい」
目の前には複数の花々が、ギラギラと艶やかに咲き誇る。
見て、こっちを見て、もっとよ、もっと頂戴よ。
遜る癖にここにいる花々は強欲で、幾ら与えてもキリが無い。
花ではないのかもしれない。
ああ虫かもな。
そういえば もよく、あの人とガーデニングをしていて、そんな話をしていた。
そうするとこっちが花か。
花、花ね…。
彼奴等の手が自分に伸びて、触れる。
自分の身体が後ろへとゆっくりと倒され、自分よりも大きな虫達が這い寄る。
心配なのは自分の片割れの事だけ。
この夜に1人で泣いていないか、寒くて震えていないか。
きっと今も辛い筈なのに、自分は傍にいる事も叶わない。



