過つは彼の性、許すは我の心 弐



 耳をギュッと塞ぎたい。

 泣いて何処かに引き篭もりたい。

 そしたらあの人が見つけてくれる。ぎゅっと抱き締めてくれる。

 暗い闇の中でも煌々と輝く存在が。

 誰も与えてくれず、普通なら当たり前に与えられているモノ。

 あの人が、実の両親すら与えてくれなかったモノを与えてくれる。

 でも、あの人は岩戸に隠された。

 岩戸の前で踊っても決して出ない、嫌でも出さないだろう。

 気持ちは分かる。

 自分が同じ立場ならきっと同じ事をしたと思うから。


ーーーするりと紐が解かれた。


「だから、今日()施しを与えて下さい」


 目の前には複数の花々が、ギラギラと艶やかに咲き誇る。

 見て、こっちを見て、もっとよ、もっと頂戴よ。

 遜る癖にここにいる花々は強欲で、幾ら与えてもキリが無い。

 花ではないのかもしれない。

 ああ虫かもな。

 そういえば   もよく、あの人とガーデニングをしていて、そんな話をしていた。

 そうするとこっちが花か。

 花、花ね…。

 彼奴等の手が自分に伸びて、触れる。

 自分の身体が後ろへとゆっくりと倒され、自分よりも大きな虫達が這い寄る。

 心配なのは自分の片割れの事だけ。

 この夜に1人で泣いていないか、寒くて震えていないか。

 きっと今も辛い筈なのに、自分は傍にいる事も叶わない。