眠りに付いた事を確認して、彼女の首元に指先を這わせる。
「ん…」
一瞬動きを止めたが何も無かった様に、彼女が添い寝する俺の方に身体を寄せてホッとする。
体調の悪さに気付いていなかったのだろう。
首の辺りに付けられたマーキング。
見えた瞬間例え様の無い感情に襲われたが、発露しない様にゆっくり息を吸って吐いてを繰り返して自重する。
怖がらせたくはない。
でも何故だかソドムの一件以降、彼女の手に、彼女自身に触れたくて仕方ない。
彼女が困っていても、無意識にもっと触りたいと態度に出てしまっているらしく、海祇に「やめんか!」と不快だが止められる事が多い。
以前なら相手が嫌がる前に引く事が出来ていたし、何なら今だってそうだ。
他人に触れたいと思う事は今でもないけれど、綴だけは違う。
もっと触れたいし、もっと困らせてやりたい。
俺の事だけで一杯になればいいのに。
怖ろしいほど子供じみた考えに戸惑った事があったが、妃帥が。
『いいのよ獅帥。貴方にも自我が芽生えたって事なんだから。貴方の人らしい感情を齎すその相手が、私の綴なら尚良いわ』
『…』
『ふふ…大丈夫よ。綴は貴方が我儘を沢山言ったからと言って、嫌いにならないわ』
良いんだろうかと思うが、妃帥がそう言うなら間違ってはいないんだろう。



