過つは彼の性、許すは我の心 弐



 自分が可愛いなんて平時なら絶対に言わないが、熱と体調の悪さでこんがらがっている私の支離滅裂な思考回路ではそれすらわかっていなかった。


「お医者さんに会ったら文化祭出れなくなる!」


 そしたら親に連絡されて暫くは学校に来れない、そしたら文化祭出れない。

 
「綴…」


 どんな難題でも簡単に解いて見せるだろう男が、柳眉を八の字にして本当に困った様な顔をしていた。


「一杯寝れば治るから」

「…」


 唸り声を上げそうな獅帥君は目を瞑って少し考え込むと、


「ーーー文化祭に出たいんだな?」

「うん」

「分かった」


 背後に何某か呼び掛けた獅帥君の声と共に扉が閉まる音が聞こえ、獅帥君は「だったらもう寝ろ」と私を掛け布団を掛ける。

 布団の上からリズム良く叩かれる。


「眠くなって来た…」

「ああ寝てくれ」


 眠くなって来てうつらうつらしながら、そうだ文化祭1日目なのに何でここいるんだ?獅帥君を帰さないと喜影君来ちゃう?


「獅帥君文化祭どうしたの制服じゃん。後早く帰んないと」


 心配になって起き上がろうとすると「頼むから寝ろ」と私を押し戻す。


「クラスでお前からの返事来るまで着替えないと言っていたら、惣倉が来た」

「うん」

「嫌な予感がしたから、惣倉と話出したら惣倉が急に走り出して、俺も着いていったらお前が倒れていたんだ」

「…そうなんだ」