過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 困った様に惣倉君が眉を八の字にしているが、あれここに惣倉君いると危ないんじゃ。


「逃げなきゃ惣倉君」

「先輩動かないで」


 起き上がると惣倉君が押し戻そうとしてくるが、いやいやこんな事している場合じゃないんだ。


「喜影君にいじめられちゃうっ」

「喜影…って何で先輩」


 息を呑む惣倉君に、


「だって親戚の人に虐められてるんでしょう、身体の痛そうな傷知っているんだから」


 今までに触れなかった事を言った。


「先輩…」

「聞きたい事一杯あるけど黙ってるの。そうしないと惣倉君居なくなっちゃうでしょう、また」

「…虐められているのは語弊がありますけど、居なくなりませんよ。もしそうなってもちゃんと先輩に言ってからにします」

「やだそんなもし聞かないっ」


 本当に困った様な顔をして、惣倉君はうーんと唸って「そもそも喜影が何で先輩の所に来るんですか」と話を戻した。

 夢の中なのか現実なのか区別が付いていないので、誰にも言っていない事実がポロポロ出る。


「惣倉総出で妃帥ちゃん殺すって言うから怖くって」

「…」

「惣倉君はそんな事はしないって分かってるし、妃帥ちゃんが殺されるなんて現実味ないって思ったんけど、最近リタとも会ったし」

「リタ?」