「唐堂さん?」
喜影君は私から少し起き上がり、扉の方に視線を向ける。
まさかと思って彼の口を手で押さえた。
「…」
無言の彼に見下されるが喋んないで!と視線で訴えれば、一応は黙ってくれるつもりらしく、またベットへと沈もうとして、
「後天條君また迎えに来てるんだけど…」
ドアの主の声に動きを止めた。
直感的に不味いと思ったが、遅かった。
「ひゃあ!」
身体を大きく持ち上げられ、彼の膝に乗る様な姿勢にさせられて涙目になる。
「唐堂さん大丈夫?」
「だい…」
じょうぶ、その言葉は最後まで言えなかった。
彼に腰だけを支えられて、そのまま立ち上がられた。もう恐慌状態で、彼の身体に足を巻き付けて腕を彼の首に掛けてしがみつく。
地に足がつかない浮遊感とバレたらどうしようと言った緊張感に身体が強張り、元の硬度を取り戻した彼に歩きながら揺さぶられた。
「あ!」
「唐堂さん?」
声を漏らさない様に口を噛み締めると血が滲む。それに気付いて、彼が私の口に舌を這わせて血液を舐めた。
驚いて口を上げれば、侵入を果たされて縦横無尽に暴れられ、目尻から涙が浮かぶ。
「もしかして具合悪過ぎて動けないの?ちょっと待ってて!寮の管理人に声を掛けて鍵開けてもらうよう言ってくるから!」



