「私の勝手な推測なんだけどさ。妃帥ちゃんは獅帥君に、もっと自分を出して欲しいんじゃないかなって」
「…」
うとうとしながら聞く獅帥君に更に近付く。
獅帥君の眠気眼に見守られる中、彼に布団を掛けた私はベッドの近くにあった椅子に腰を下ろす。
そして、布団の上からトン…トン…とリズミカルに優しく叩く。
お母さんが寝付かない子供にやる様にそっと、ゆっくり。
「その第一歩として、獅帥君には周囲がどう思っているのか分かって欲しいんじゃないかなあって…2人のやり取り見てて思ったんだけど、どう?」
「分かって欲しい…」
鸚鵡返しになりつつある獅帥君を見ながら、私も脳内で妃帥ちゃんの言動を振り返る。
私をミケにすると言った時も、獅帥君に何か問題でもあるの?と態度で言いながら、何処か獅帥君の言葉を待つ様な態度でもあった。
それに私が初めてのお宅訪問時にオシャレを褒めろと言った時も、普通はこう褒めるもんだとも言っていた。
妃帥ちゃんの言動の端々に、獅帥君自身の意思を問い掛けている様に見えるのは私の気のせいではない筈…多分。
我を出す事を禁じる様な掟に染まる双子の兄。
そんな兄を変えたくて必死にそう…まるで、命を懸けて変えようとする様な切迫感さえ見える時がある。



