私は胸に拳を置いて、鉄将君を真っ直ぐ見る。
「分かっているよ。今までも危ない目に遭ったし」
「じゃあ何で、」
鉄将君の疑問も、もっともだ。
友達が危ない目に遭うかもしれないと分かっているなら、全力で止めたいと思うだろう。
けれど、
「傍に居たいって思っちゃったから」
「傍に居たいって…」
すかさず言った私に、鉄将君は口籠る。
どうして あの彼女の傍にいたいのか。
一見恵まれている環境にいて、か弱くて、蝶よ花よと育てられ、皆んなにチヤホヤされないと気が済まないと 思われている女の子。
それだけの女の子じゃないのを、今までの短い付き合いで私は知っている。でも…皆を納得させるだけの理由が今の私にはないから。
「まあ見守ってよ」
「唐堂…」
複雑な表情の鉄将君は、今更決まった事を覆せないと聡ったのか「埜々にはお前から伝えてくれよ」と少し溜息を吐く。
「勿論」
自信満々に答えると、鉄将君は「…やっぱり心配だわ」と呟いた。
「妃帥ちゃんのミケって胸張れる様に努力するからさ。期待してて」
「努力って何するんだよ」
ややふてぐされ気味の鉄将君から、獅帥君に視線を合わせる。
突然見られて一瞬ビクッとなる獅帥君に、私はニッと笑って。
「今は聞き分けのないお兄ちゃんをお風呂に入れることかな」



