天條家の事を知れば知る程あり得ないと思っていたけれど、あんなに明るく笑い合っている渚君と夏波ちゃんも、どうしようもない理不尽を背負っていたのかと愕然とした。
「阿呆らしいやろう。俺が当主になったらそんなん変えたるって思た時もあった。せやけど、ミサさん」
ミサさん、洋直ちゃんのお母さん。
「ミサさんはそんな不条理を嫌うてな。将来生まれる自分の子や未来の事を考えて異を唱えた。ただ、幾ら親父が当主になってその片割れの言葉であっても、聞く耳を持つ一族はおれへんかった。そのまま一族の男と共に出てって…ミサさんに災いが降り掛かった」
「《《災い》》?」
普段絶対に使わない言葉に、私が疑問を呈すると渚君は淡々と答えてくれた。
「行の中で生き残った子供達の、更にその中で特殊な役割を与えられる奴らがおんねんけど、俺と夏波はその特殊な役割を与えられてる。その役目を果たす為には、島に定期的に帰る必要がある。俺らの前は親父とミサさんやった」
「えと、そうだとすると、ミサさん達は駆け落ちしたんだよね、て事はその役目出来ないって事で」
渚君は短く「そう」と言った。



