過つは彼の性、許すは我の心 弐



 自分ではそこまで人当たり良くしたつもりはなくって、何でだと思っていたある日の移動教室の道すがら。


「渚君が笑うと周囲がパアッと明るくなるんだよ」


 唐堂綴の謎の言い回しに更に首を傾げる。


「明るなる?」

「そうそう。白黒だったのが急に色彩豊かになるぐらいの違いがあるよ」

「はあ…」

 
 自分としては無意識に笑っていた事すら驚きだった。


「渚君って本当に楽しそうに笑うから、何も無くても笑顔を見るだけで気分が上がる…パワースポット?元気の源?的な」

「…よう意味が分かれへんな」

「でも1番は渚君優しいからだね」

「はあ?」

「だってこうやってウザイぐらい声掛けてくる同級生を無碍にせず、ちゃんと相手してくれている所だと思うよ」

「…」

「ま、夏波ちゃんのお陰でもあるよね」


 大きく自分が変わったと思えなかった。

 それでも時々唐堂綴が言う言葉は何だか、胸が形容し難い気持ちにさせられる時がある。

 まるで自分の根底にある忘れていたモノを掘り出されている様な気分にさせられるのだ。

 それも結構大事なモノ。

 本能でその感覚は悪いものではないとは理解している。


「渚君?」

「いや」


 ただこう言う気持ちを何と言っていいか分からずに、照れ隠しの様に足を早めた。


「待って〜」


 後ろから追っかけて来る唐堂綴を待たずに、只管足を動かすのに専念して、その日は唐堂綴と話す事もなかった。