「正気だもーん」
周囲にいた他のクラスメイトが、コソコソ会話しているのが聞こえる。
「だったらよせって」
「綴の悪い癖」
「そうそう直し様がない私の悪い癖だから黙って見守ってて下さーい」
《《悪い癖?》》
「おい!そこ授業中だ!」
「すみませんでしたー!」
唐堂綴の謝罪に、話していたクラスメイトは今度こそ静かになった。
気紛れか、何か目的があってか。
《《悪い癖》》。
取り敢えず夏波に聞かなければ。
夏波が騙されている可能性もあるし、勝手に女が妄想で夏波を友人だと言っている可能性もある。
けれど、
「え?綴ちゃんだよ、友達」
そんな風に考えていた俺の考えは当の夏波によって打ち砕かれた。
帰りの車の中で唐堂綴に言われた事を問い正して、呆れてしまった。
「…あんなあ夏波、急に距離詰めて来るなんて可笑しいやろ。なんか目的があ、」
「そうだ兄さん。いつもこうやって2人で帰っているじゃない?」
「話を聞いて…ああそうやけど」
「明日から友達と帰っていい?て言うか、兄さん綴ちゃんと帰りなよ」
「は?」
「明日からそう言う事で」
夏波は運転手にそう伝えると「分かりました」と諌めるでもなく了承した。
「分かった、ちゃう!」
もっと疑問を持てよ!と言い掛けて「兄さん」とピシャリと言う夏波の声に遮られた。



