と言うか考えられなかった。
そんな夏波以外の特別が出来るなんて、そんなのなんて夢のまた夢。
そもそも夏波を守れるのは俺だけだと、
「こんにちわ海祇君。唐堂綴です、これからよろしく!」
思っていた所にその女は唐突に現れたのだ。
いや前兆みたいなのはあった。
不思議な事に俺と同じ状態だった妹の夏波が、楽しそうに笑うようになり、周囲と上手くやる様になったのだ。
夏波に聞くと『ふふ…最近素敵な友達が出来たの』と笑うだけで、結局は分からなかったが…。
訝し気に唐堂綴と言う女を見つめる。
肩に届く程度の黒髪に顔は整っていると言える方だが、抜きん出て美しいとか可愛いとかでもなく、派手でも地味すぎもしない…あり大抵に言えば普通。
ニコニコ笑っている姿は、肩の力が抜ける程の平凡さで、警戒しているこっちが馬鹿らしくなってくる。
「海祇君?」
「…」
いつまで経っても返事をしない俺に唐堂綴は「妹の夏波ちゃんとはお友達でーす」と言った。
「…夏波と?」
「うん」
「お前が、」
お前と夏波が?と言い掛けた所で、チャイムが鳴った途端「また後でねー!」と言って早々に立ち去った。
「(なんやアイツは…)」
話し掛けて来たと思ったら(チャイムがなったからとは言え)さっさと自分の席に着席した。
「ちょっと綴」
「え?」
「話し掛けオーラ突破するとか正気か?」



