過つは彼の性、許すは我の心 弐



 何だろう?と思っていれば、


『直房君、来てなかったか?』


 思ってもみない事を言われた。


『ナオ?』

『ほらお前が彼と話している時。蕎麦も準備できたし、少し外の空気を吸おうかと玄関から外に出たんだけれど、』

『うん』

『人の気配がして門の外まで見に行ったら、2階を見上げていた直房君がいてね。声を掛け様としたら此方に気付いて、直ぐに走って行ってしまったんだ』


 私は『そうなんだ…』と言いながら、この間遊びに行った時に忘れ物でもしたかなと単純に考えていた。


『…顔が強張っている感じだったから綴と喧嘩でもしたのかと』

『ええ?』

『ほらあそこ、丁度綴の部屋の窓見えるだろう』


 お祖父ちゃんが指差す所は、円嘉の住んでいたお屋敷の跡地側(反対側はナオの元実家跡地)の方で、確かに下から見れば私の部屋の窓が見える。

 前は壁があったけれど更地となった後は、綴ー野球行こうぜーみたいな事が出来たから、友人内ではそっから声を掛けて来る人も居た。


『…喧嘩はしてないけど、アレかな獅帥君が傍に居たから遠慮したのかも』


 確かに窓辺で獅帥君と話していたし、そう考えたら悪い事をしたかも。


『後で電話してみる』

『…そうだね、そうしてみると良い』