でも、私はその日とっても不思議な夢を見た。
海に近い、お祖父ちゃんの別荘。
小さな私は別荘の裏手から入り、そのまま縁側に入った。
この時の私はワクワクしていた。
だって時々会えるのだ。
『あ、お月様!』
『綴か』
私は縁側に腰掛けていた人物…お月様に会えるから。
レアな存在のお月様に会えるのは本当に時々だけれど、私が沢山話すのを、静かに楽しそうに聞いてくれるお月様が大好きだった。
その日もその延長で、ドスンと横に座る。
『1人で来たの?』
『うん!もうつづ小学生だから1人で来れる!』
ドヤ顔で言うとお月様は穏やかに微笑んでいたが目の縁が赤かった。
『泣いてたの?』
『ちょっとね…』
『どうして?』
『…大事な人達と離れる事になってね』
そう言ったお月様は、今まで見た中で1番悲しそうな顔だった。
お月様のそんな姿を見たくなくって『また会えるでしょ?』とせき立てる様に聞いていた。
『会えないんだ』
『何で?』
『僕が居ると傷付けてしまうから…』
『私はお月様と居るの好き!』
『ふふ…ありがとう』
少しだけ笑わせる事に成功はしたけれど、お月様の雲が晴れる事はなかった。
『…綴ぐらいの年の子達でね。良い子達だったんだけど僕が居たせいで、』
お月様は堪える様にグッと言葉を止めて、
『そう…傷付けた沢山』
力無く言った。



