過つは彼の性、許すは我の心 弐



 居心地悪くしている八重さんに全く気付かない陽気過ぎる匡獅さんが容易に想像付いた。


「…シンカンって大変だね」

「そうだね、八重は特にシンカンを選ぶ前から傍に居させられるているから、他のシンカンに比べたら苦労は倍だろうね」


 その言葉にあれとなった。


「シンカンを選ぶ前?…オオミカって、親にも7つの歳になるまで基本的には会えないって」

「そうか綴もミケだったか」


 獅帥君の方を見ると初耳だったのか目を瞬かせている。


「…アレがオオミカとしての教育を受ける前に、事件が起きてね」

「事件?」


 重々しい口調でお祖父ちゃんが口を開く。

 それは、


「アレのーーー彼の両親が亡くなってね」


 予想だにしない理由で、思わず押し黙ってしまった。

 コツンと箸を置く音がする。


「…葬儀に行った八重と彼が出会して、その時に彼がいたく八重を気に入ってしまって…掟を破る事にはなるが、彼はまだ両親の手が離れるには早過ぎると判断されたらしく、八重を傍に置きながらオオミカの教育を受ける事になったと聞いたよ」


「へ、へえ…」


 私は衝撃の事実に間抜けな返答しか出来ずにいたが、獅帥君はお祖父ちゃんを訝し気に見る。

 そして、


「貴方は、何でそんな事まで知っているんですか?」