過つは彼の性、許すは我の心 弐



 すると、背後から。


『円嘉』


 男から発せられた声に円嘉が止まる。


『友達は選べ』

『…関係ないでしょう』


 聞いた事もない円嘉の怖い声にただ黙っていた。

 男が、


『私の品性に関わる。お前は私のむす、』


 そう言い掛けた瞬間に円嘉が遮る様に叫んだ。


『知らない!あの女は中でアンタを待っているから行けば?』

『あ、円嘉!』


 振り向く事なく、円嘉に引っ張られて屋敷から離れた。

 それ以降あの男が私を見る目が嫌だったので、円嘉の家まで迎えに行く事は無くなった。(円嘉も私の家で集合する事に賛成したから)

 後から噂で聞いたのは、円嘉のお母さんはお金持ちの所謂お妾さんだったらしく、円嘉は私が門の前で会った男との子供だった。

 幼稚園や保育園に円嘉は通っていなかったから、お母さんを見る事がなかったんだけれど、屋敷の窓辺で幽霊の様に佇む姿を見た事がある。

 美しい人なんだけれどゆらゆらと頼りな気に窓の外を見ていて、瞳に正気すら通っていなかったのが何処となく怖かった。

 円嘉の家は誰もが触れる事を躊躇う雰囲気で、私も知っている事は少ない。

 1番上のお姉さんは行方を晦ましているとか、2番目のお姉さんは10代で結婚しているとか、下にもう1人妹がいるとか。