そんな緊張せんでもと思っていれば、
「臭うと」
「!」
中々に厳しい意見に獅帥君は、先程よりもビシリッと音を立ててそうな硬直を見せてくれた。
…さっき目一杯息吸った時にいつもの甘い良い匂いしかしなかったけれど、臭かった時もあったんだろうか。いやカズミさんが乗ってくれただけか。(真偽不明)
周囲もあんまり臭うって言う獅帥君を想像出来ない様で(特に恋する乙女の清維は両手で口を覆って信じられないって言った風)と言うか、何でこんな話になっているんだと頭上にハテナマークを出すだけでフォローもない。
うむむ…ちょっと獅帥君が可哀想か。
「ああええと、獅帥君」
「…」
ちょいと呆然としている獅帥くんは、少し可愛らしくも見えたが(人前じゃなければ髪わしゃわしゃとしたかも)落ち着けと咳払いして、きゅっと獅帥君の手を握る。
「カズミさんお風呂って?」
「直ぐに準備出来ます」
「よし!もし妃帥ちゃん起きたら絶対に声掛けるから!任せて!ほらさっさと行くよ!」
グイグイと獅帥君の手を引っ張り、さあ来い来るんだ!と獅帥君部屋に誘おうとする。
すると、
「ふっくくく…流石唐堂だな」
笑いながらこの場で1番上背の、染めた事がない黒髪(彼の許嫁が黒髪が似合うと彼に言ったため)の男が現れた。
私は彼を知っている。



