「いい獅帥君。妃帥ちゃんが起きた時に、隈だらけの臭いお兄ちゃんと、お風呂に上がって睡眠もとった良い匂いのお兄ちゃん。2人いたらどっちを選ぶ?」
私の阿呆そうな発言に、目を見開いただけで固まる獅帥君。
一見空気読めよ馬鹿がと思われるかもしれないが、私は妃帥ちゃんが「え?お兄ちゃんずっと妃帥の傍にいてくれたの?嬉しい〜!」なんて言う子じゃないのを知っている。
私の知っているのは「はあ…またお兄様ったら…」と呆れて、それを止めもしない周囲に舌打ちするのが妃帥ちゃんなのだ。
「私だって弟大好きだけど、流石に汗掻いてお風呂入らない弟いたらお風呂入れって思うよ」
なら、多少阿呆臭くても獅帥君を休ませるのが絶対に良い。
そんな私の思いが伝わったのか否か。
「…」
沈黙を貫く獅帥君は、少しだけ柳眉が八の字にしている。
これは本当に?マジ?俺臭い?と思い始めている…のか?
よしダメ押しに。
「カズミさんはどう思う?」
「私ですか?」
妃帥ちゃんをよく知るカズミさんも乗ってくれる事を期待して、話題を振ってみる。
「そうですね…」
顎に手を当てながらカズミさんは考え込む。
衆目を集めても顔色一つ変えないカズミさんは「以前妃帥お嬢様が言っていたんですけれど…」と切り出した。
「起きるまで傍に居てくれるのは有難いけれど…ちょっと、」
ゴクリと獅帥君の喉仏が動くのを間近で見る。



