「でさあ。この間そのメンバーを誘って、海に行ったんだけど…」
「待て待て綴、濃すぎる濃すぎる」
ええー…と言うと、困った様に笑った彼は「今日は飯食ってくか?」と笑った。
「うん、あでも…」
「大丈夫気にしないでくれ」
鋭く襖の先を見たが、直ぐに笑って台所に向かう。
「ーーーありがとうナオ」
「いいって、俺の方が気晴らしになる。お前ぐらいしか来ねえし」
「…」
「悪ぃ」
ボリボリ後頭部を掻きながら、坊主頭のナオ…直房は暖簾の先に消えた。
携帯を見たら、獅帥君からの近況報告が来ている。
それを見てニヤニヤする。
もう夏休みも最終盤。
あのソドム事件以降、妃帥ちゃんの容体は見る見る良くなっていた。
だからと言って、直ぐには家に帰れる訳じゃなかったから、私も残り少ないお泊まり期間は、病院と獅帥君との就寝前トーク(時々凌久君)で費やした。
で、帰郷してからお母さんにその話をしたら、お祖父ちゃんの持っている海に近い別荘に呼んでおもてなしをしたら?の案に飛び付いて、今皆を呼んだ時の事を話していたんだけれど、ふとそう言えば3人で遊びに行ったなと思い出した。
「…」
3人、あの子とナオと私。
遠くからコオロギの鳴く音が聞こえる。
未だにあの子との間に起きた事を思い出すと、こんなに胸が痛くなるんだからまだまだ私は駄目だなあと思ってしまう。



