「すみません、天條妃帥さんは…」
「天條さん?ああ少し待ってて下さいね」
入り口にいた看護師に声を掛けると、会う事は可能との事でそのまま着いて行く。
いよいよだ。
ドクドクと心臓が暴れる。
病院を立つ前にいた部屋の入り口に、カズミさんと圭三郎さんが揃っていた。
2人は私達を見て目を丸くする。
「お二人とも無事で何よりです」
「お待ちしていました」
口々に2人が労ってくれるが、それよりもと聞いてしまう。
「ひ…妃帥ちゃんは」
握る手が震えている気がした。
「一時危ぶまれましたが、少し前から状態が安定してきまして…」
どうぞと言われて、2人で病室に入る。
「妃帥ちゃん…」
出る前に比べたら穏やかに眠る妃帥ちゃんがそこに居た。
2人で眠る妃帥ちゃんのベッドサイドに近付く。
「妃帥ちゃん…」
血色もさっきより全然良い。
状態が落ち着いたって事は、今まで妃帥ちゃんも戦っていたって事だよね。
ならタイミング悪かったかも。
一回出直すべきか迷っていると、獅帥君が少しだけ屈む。
そして、
「ーーー妃帥」
大切にそっと呟いた。
すると、
「妃帥ちゃん…!」
長い睫毛が震えて、美しく聡明な薄茶色の瞳が瞼から覗く。
私達を見て、決して大きな声ではないのに。
「し、」
「ああ」
声が聞こえる。
「獅帥」
「ああ」
こんな短い2人の言葉のやり取りだけで、胸が一杯になる。



