過つは彼の性、許すは我の心 弐


 

「よくもあそこまでやりやがったな!!」


 あそこまで?

 何があったのか分からないが、もしかして惣倉君の言っていたさっきの事ってやつなのか。

 ただ何方にしろ、


「ソイツらはこの場所を襲撃した奴らだ!引き渡してもらう!」


 何を言っても私達を通さない気迫を感じ、思わず足が一歩引く。

 どうしよう戦闘になったら私絶対に足手纏いになる。

 折角獅帥君を連れて帰れそうなのに…!

 緊張と焦りでギュウっと獅帥君の手を握り締める。

 獅帥君が私の手を握り返してくれた瞬間、あんなに殺気立っていた男達が黙り込んだ。

 肌がピリピリして隣を見上げれば、 彼等の圧にたじろく事無く、前にいる彼等を見ていた。

 獅帥君の何時もの超越した美しい顔。

 なのに、


「…っ」


 そこには先程怯えていた男の影は無く、自分とそれ以外を分ける淡々と無感情な、初めて会った時の彼がそこに居た。


「ーーー襲撃犯の事は知らない。下がれ」

「…っ貴方の友人が廊下で倒れていた!きっとソイツらが!」

「…分かった」


 尚も食い付く男は気づかないのか。

 話を聞いてくれると思った男が「じゃあ引きわ、」と言い掛ける。


「お前名前は」

「は?」

「名前を言え」

「何故名前な、」

「お前の親兄弟に至るまで探し出して、今回の責任を取らせる」