私は引っ張られながら、
「鉄将君」
「え?」
「今ギリギリだから」
「…」
そう言うのが精一杯だったけれど、伝わったかな。
今の鉄将君は無視されたと思っているけれど、獅帥君は妃帥ちゃんの事で一杯一杯だから、誰かの気持ちに答える余裕はない。
だから分かってあげて欲しい。
そんな思いで鉄将君を見つめた後、視線を獅帥君の方に向けた。
「ほら行きますよ武鎧先輩」
「ああ…」
突然気持ちは整理できないだろうけれど、いつかは…。
すると、ピタリと止まる獅帥君。
「どうしたの?」
「…」
ドタバタと廊下を走る音が聞こえて来る。
もしかして渚君達?と思っていれば、
「げ!」
「お前ら!見つけたぞ!」
私は慌ててヴェールを被り直す。
ドッグラン達だ。
惣倉君達がある程度は足止めしてくれたとは言っていたけれど、まだこんなに居たのか…。
「っち…」
後ろから何方のものかと分からない舌打ちが聞こえる。
行く先を、しっかりと横並びとなり、後ろにも人がぎっしりと詰めていて、とてもではないが横抜け出来ない様にしている。
にしても、凄い警戒の仕方じゃない?
素人の私でも凄まじい殺気を感じる程、ドッグラン達の勢いは鬼気迫るものだった。
「今更被ってもバレてるぞ!」
え、本当?



