過つは彼の性、許すは我の心 弐



 私は引っ張られながら、


「鉄将君」

「え?」

「今ギリギリだから」

「…」


 そう言うのが精一杯だったけれど、伝わったかな。

 今の鉄将君は無視されたと思っているけれど、獅帥君は妃帥ちゃんの事で一杯一杯だから、誰かの気持ちに答える余裕はない。

 だから分かってあげて欲しい。

 そんな思いで鉄将君を見つめた後、視線を獅帥君の方に向けた。


「ほら行きますよ武鎧先輩」

「ああ…」


 突然気持ちは整理できないだろうけれど、いつかは…。

 すると、ピタリと止まる獅帥君。


「どうしたの?」

「…」


 ドタバタと廊下を走る音が聞こえて来る。

 もしかして渚君達?と思っていれば、


「げ!」

「お前ら!見つけたぞ!」


 私は慌ててヴェールを被り直す。

 ドッグラン達だ。

 惣倉君達がある程度は足止めしてくれたとは言っていたけれど、まだこんなに居たのか…。


「っち…」


 後ろから何方のものかと分からない舌打ちが聞こえる。

 行く先を、しっかりと横並びとなり、後ろにも人がぎっしりと詰めていて、とてもではないが横抜け出来ない様にしている。

 にしても、凄い警戒の仕方じゃない?

 素人の私でも凄まじい殺気を感じる程、ドッグラン達の勢いは鬼気迫るものだった。


「今更被ってもバレてるぞ!」


 え、本当?