惣倉君が真顔で言っているのを鉄将君が必死に止めているが、気になる単語が。
「さっき?」
私は近づきながら(手繋ぎ獅帥君付きで)、そのさっきについて何の事か尋ねてみた。
「あーつまらない話ですよ。意味あり気に登場した奴が実は大した事なかったって感じで、拍子抜けだったんです」
「いやアイツ絶対に危ねえ奴だったろ!?」
「しかもこっちの力量を計りたいが為に実力を出し切る事もなくやられた…悪役にしても三流がいい所ですよ」
「さ、三流…」
鉄将君は何故だが落ち込んで、惣倉君は「悪役としてもいまいちな奴でした。雑魚モブの中でも、話を進める為だけに会話する役割だけ与えられた存在みたいな野郎でした」と結構酷い評価をした。
「先輩が存在を認識するにも値しない人ですよ」
「そ、そっか…」
毒舌極まりけりな惣倉君の言い方に、三流雑魚モブ野郎さん(酷い言い方だけれど、惣倉君のくれた情報以外知らないのでこの言い方で呼ぶのは許して欲しい)に同情していたら、落ち込んでいた鉄将君と獅帥君が見つめあう。
「獅帥…」
「…」
目に見えない溝。
見えないけれど、相当な深さが広がっている事だろう。
「し、」
「…行こう綴」
事実獅帥君は鉄将君には助けを求めない。
「…うん」
2人いや獅帥君とシンカンに出来た溝は、それ相応の年月を掛けて埋めなければいけないのは確かで。



