過つは彼の性、許すは我の心 弐



 自分の身体から獅帥君の顔を離す。

 不安定に揺れる瞳。

 私も不安。

 でも、


「行こう獅帥君、一緒に」

「ああ…」


 1人じゃないから。

 
「あのー…先輩。申し訳ないですが…」

「お前らこんな時に」


 へ?と後ろを見れば、マスクを脱いだ惣倉君と鉄将君が入り口付近に立っていた。

 微妙に鉄将君は気まずそうに目を伏せていて、そうだ私とんでもない格好をしていたと思い出す。


「獅帥君今更ごめん!」


 慌てて離れようとして、グッと引き寄せられる。

 獅帥君のご尊顔が近付き、ウヒャアと後ろに下がろうとするが更に引き寄せられる。


「し、獅帥君!?」


 こんな所でこんな事している場合じゃないでしょう!と言い掛けると、私の胸元で「不安な気がする…」と頼り気なに呟く。


…背を向けていた事に立ち向かうのは、簡単な事じゃないよね。

 よし。


「…分かった。じゃあこうしよう」

「…?」


 引き寄せる手を私の手と絡める。


「妃帥ちゃんの所まで手を繋ごう」

「…」


 コクリと頷いた獅帥君は、手を握りながらベットから降りる。

 そして、私の指の間に自身の指を挟む様にして握り…所謂恋人繋ぎをした。

 うん…。


「どうした綴?」

「いや…」


 もう何も言うまい…獅帥君の精神の安定になるならば、私の羞恥なんて塵芥よ。(前もこんな事あった様な)


「…コイツやっていいですか?」

「おいよせ!さっきので懲りたろ!」