「2人は傍にいなきゃ駄目、絶対」
何を言葉にしていいのか、どうしていいのか分からない。
表情でそう語っている。
皆んな見てよ。
皆んなが完全無欠と崇め奉る男は、身内の死に怯えて、何の力も無い女の言葉にただ当惑するしか無い怖がりな同じ子供なんだよ。
それでも誰かの。
「俺、は…っ」
「うん」
「俺は…!」
「うん」
「…っは」
誰かの為の神様で居ようとして、自分の願いを口にする事が出来ない、想いを言葉に出来ない、した事が無い。
人にも神にもなれない、孤独な人。
そんな姿に堪らなくなって、
「つ、つづ、り…」
「…」
ーーーー獅帥君の頭をギュッと抱き締めた。
この人が自分の願いを口に出せないなら、
「獅帥君、私。妃帥ちゃんに何かあったら怖いよ」
私が願いを口に出す。
そして彼と彼の中に存在する子供に、語り掛ける。
「だから、一緒に行ってくれる?」
「…」
獅帥君の吐息が肌を伝って、こそばゆい。
「妃帥ちゃんの傍に」
胸の中で息を詰める様な雰囲気が伝わった。
苦しくも、
「一緒に、」
「うん」
拙くても、
「行く」
彼は応えてくれた。
「…ありがとう」
更にギュッと抱き締めると、獅帥君の腕が私の腰に周り私を抱き締める。
「綴」
「うん」
「迎えに来てくれて…ありがとう」
「うん…っ」
彼の腕が震えている。
これからの事が怖いんだろう。
妃帥ちゃんが今どうなっているのか。



