私結構な名女優じゃない?(自画自賛)
上手く行き過ぎて逆に怖いけれどパタンーーと最後の女が出て行くのを見届けて、振り向く。
次に戦うのは、
「ちゃんと起きた?」
「…」
さっきまで一緒に大人の遊びに興じていた女達が脅されていたにも関わらず、沈黙を貫いていた男。
下手したら私が女達を殺そうとしても、眉すら動かさなそう。
………本当に獅帥君。君って奴は。
近付いて彼に手を差し出した。
「帰るよ」
「…」
獅帥君は黙って視線を逸らす。
「私と帰りたくないなら、鉄将君とでもいいから帰ろう」
「…何処に、」
沈黙を貫いた男が口を漸く開く。
「帰ればいい」
「…っ」
身体に一気に怒りが駆け巡り、破廉恥な男の襟をガッと掴み引き寄せる。
「…」
「…」
恐怖も何もない虚な瞳。
獅帥君の顔を見ていると、ふわりと赤い着物が視界に入った様な気がして、目に涙が溜まる。
涙が溢れそうになる。
天井を見上げ、
「る訳ないでしょうが!!!」
「っい」
国宝級の顔に石頭をぶつけた。
おでこジンジンする…!でも!
私は少しだけ後退するが、片手で鼻を押さえる獅帥君を睨む。
「ふざけんな!帰る場所がない!?あるだろうが!兄思いの優しい妹が居るでしょうが!」
「…」
「自分の方が辛いから弱った妹の姿を見たくない?先を想像したら怖くて傍に居れない?」



