過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 チワワのマスクを付けた男…総責任者の声ではなかったが、何だ今のは。

 別人の声だったが、まるで拷問でも受けているかの様な声だった。

 各国の紛争地域を流浪して人殺しを楽しむ凄腕の傭兵と聞いていたが…。

 そんな奴が実践経験も碌にないシンカンに携帯を取られるってどういう状況だ。


「…そう言えば海祇も来てたんだっけ」


 他所外の人物が来たと思っていたが…。

 まさか海祇渚が?

 獅帥と関わる様になってから海祇渚について調査していたが(夏波ちゃんの事も知りたかったし)天條並みに秘匿主義で大した情報も出なかった。

 そもそも海祇と獅帥が付き合いが出来たのはここ数カ月で、過去に妹の妃帥との付き合いはあったが、とある事があってその後は没交渉になっていた筈だ。

 今更獅帥に魅せられたって感じでもなさそうだったし、再び妹に関心を寄せた訳ではなさそうだから、じゃあ何の為に手を貸、

 
『…唐堂綴です』


 そうだった。

 パーティーで海祇に釘を差されたんだ。

 唐堂綴に手を出すなって。

 あの女のミケとか言う巫山戯た存在。
 
 俺が過去を少し突いたら、泣きそうになった非力な女。

 アレがここに来ている?そんな度胸ある様には見えなかった。

 妃帥の玩具なら今までも居たからそこまで脅威では無いと思っていたが…。