過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 人と言う枠に無理矢理嵌め込まれ、神としての役割を求められる哀れな獅帥。

 血の繋がった家族はお互いに興味もない、双子に不幸が訪れても何も変わらなかった。

 あの女が消えれば、その不安定性に気付いているのは俺のみ。

 そう、だから絶好の機会。

 憂いは排除しなきゃ。


「ハハッ…さてそろそろ捕まったかなあ」


 一頻り笑って携帯を取り出す。

 セキュリティの総責任者に連絡を掛ける。

 邪魔者達の排除が叶ったかどうか。

 携帯を耳元に当てて暫く掛けてみるが、


「んー…掛からないなあ。手こずっている?」


 応答が無い。

 あのシンカン共なら、武凱ぐらいしか脅威じゃないと思ったんだけれど、不測の事態でも起きているのか?

 掛け続けながら、少し予想外だなあと思った。

 シンカン共は此処に手を出すリスクと、あわよくば目の上のたんこぶである妃帥が居なくなれば…と思っているから来る訳ないと思っていたんだが…。

 皮肉にも本当の意味(・・・・・)で獅帥を守れているのは妃帥だけなのに…。


「ふ、ふハハ…」


 また笑いが込み上げそうになった瞬間、プツンと彼方が漸く応じた音が聞こえた。


「あーもしもしそっちど、」

「助けてくれ!!誰か、誰か!グアアアアアァアアアア!!?」


 ブツンとそのまま音が切れた。


「何だ…今の」