過つは彼の性、許すは我の心 弐



『虫?』

『油断していると直ぐにと身の程知らずな虫が集ってくるんですもの…嫌になっちゃうわ』

『そうか』
 

 今まであんなに俺の言う事を聞いていた獅帥が、簡単に俺に背を向けて、妹の暴言を諌めずに俺から離れて行く。

 取り残された俺を、虫ケラを見る様な目で見る妃帥。

 俺が、俺に媚びて馬鹿な事をする間抜け共を見て嘲笑う時と同じ目。
 
 許せなかった。

 お前が、

 お前らが(・・・・)

 俺をそんな目で見るなんて、そんなの。


「は、ハハッ…!」


 誰もいない廊下で笑いが止まらない。

 訪れた絶好の機会。

 妃帥、お前は今際の際で獅帥に会えず、孤独に死んで行く。

 獅帥、お前は俺の甘言に逃げた結果何より大事な存在の死に目に会えずに、生きながら死ぬ事になる。

 あの時俺じゃなく妃帥を、あの女を選んだ事を後悔するがいい。


「クッハハハ…!」


 最高だ。

 どうせ傍で守る筈のシンカンは役に立たない。

 嫌々やらされていると言いながら、シンカンである恩恵は甘受しつつ、1番のオオミカを守ると言う役目を全うする事が出来ていない守護者気取りの奴ら。

 外敵からすら守れない役立たず共。

 俺みたいな奴を近付けている事が良い証拠だ。

 アイツらか見れば獅帥は、完全無欠にでも見えているのだろうけれど、俺からすれば不安定で隙だらけにしか見えない。