何より自分の言う事を、とある人物の苦言さえなければ、何なく受け入れてしまうその順々さに支配欲が勝り、俺は益々獅帥の事を気に入った。
(きっと獅帥が女だったらヤバかったな)
獅帥は獅帥で、自分の置かれる状況に時々息苦しさを感じるのか、常に傍にいるシンカンや獅帥を好きな女達の諫言にも耳を貸さずに、俺の誘いを受け入れる。
自分は獅帥にとって特別。
そう驕っていた。
『獅帥〜この間行ってた所に遊び行こお〜』
あの日、あの女。
『お兄様、今日は私の傍にいて頂戴』
とある人物…天條妃帥と出会うまでは。
『…分かった。行かない』
病気がちな妃帥の存在を知ってはいたが、その時が初の邂逅であり、獅帥が初めて俺の誘いを断った日でもあった。
『何だよ獅帥、お前さっき行くって、』
『天ケ衣豊起』
流石獅帥の妹だけあって、言葉に人の行動を抑止する力があった。
獅帥によく似た熟れた柘榴の様な唇で、
『お兄様は行かないと言ったのよ。貴方如きが口を出すのなんて烏滸がましい』
俺と言う存在を跳ね除け、塵を見る様な目で釘を刺した。
お前と獅帥は違う。
そう言外に言われた気がした。
『…っ』
怒りと羞恥で何も言葉が出せない俺を尻目に、白魚の様な妃帥の腕が獅帥に伸ばされ、獅帥が大事なモノを抱きしめる様に妃帥を抱えた。
『お兄様早く行きましょう。虫嫌いなの』



