「さっきナイフでやり合う前、アンタの身体に俺、打撃入れたでしょう?」
「あんな、小突く、程度、で、ガッハ…!」
「これは俺が ちょおっと特殊で、 ちょおっとした技術を持っているから出来た事なんだけど…」
チワワ男は耐えられずに床に突っ伏す。
一瞬暗闇に包まれた時、ナイフ同士が触れ合う音と何かを殴った様な音が聞こえたのを思い出した。
だからと言って何をどうやったら血を噴き出す事態が起きるのか全く分からなかった。
「ああこれ以上のネタバラシは…俺少年漫画の主人公じゃないんで。早く救急車呼んだ方がいい。あ、でもここのセキュリティの人達ってきっと戸籍もない連中が多そうだから呼んで貰えないか」
ハハッ…乾いた笑い声を上げる惣倉。
惣倉の言動に味方の俺までもが恐怖心を煽られる。
「アンタ起きているんだったら連絡したら?」
「っ…ひ!」
そして俺すら気付かなかったドッグランの1人が起きていた気配に、あの最中で気付いたのか。
1番危ないと思っていた男を相手にしながら、覚醒している気配にまで気付いていた。
…これは力量差云々じゃ埋められない大きな壁が存在している。
俺は何でコイツにムカついていたんだ。
ムカつく事すら出来ない。
生き物のステージが違うんだ俺とコイツじゃ。



