過つは彼の性、許すは我の心 弐



「ええ分かっていましたとも!」


 チワワ男はそう言いながらブンッ!とナイフを横に払った。


「惣倉!?」


 俺が言葉を掛ける前に、


「好き勝手してくれるなあ…」


 惣倉は危なげなく後方に避けていた。

 少しホッとしながら唐突に、


「貴方いいですねえ本当」


 さっきの違和感の理由が分かった。


「…何が良いんですか?」


 嫌そうな惣倉の声が聞こえる。


「初めはどうでも良かったんですよ。ガキの集団が何しようがどうしようがね」

「…」


 チワワ男は熱を帯びた声で、


「戦場を彷徨い、流れに身を任せて辺境のこの国に来ましたが…しかし貴方と出会えた!」


 バッと胸に手を当てて声高々に言う。


「動作に出ているんですよ!高貴な者が立ち振る舞いで他者を圧倒するかの如く、貴方の動き1つ1つに暗闇で生きていた者特有の動きが滲み出ている!」

「…」

「私は貴方に感じたのですよ!自分と、いや自分より勝る何かを!」


 そうだ、あのカールとか言う変な奴と似た感じなのだ。

 ナイフを耳に刺されても平然としていたあの異様さを思い出す。


「だからこそ、私は!」


 狂気じみた語り口調と、チワワの造られた潤んだ瞳が男の異様さを演出している。


「…私は?」


 男の熱意に反して冷めた物言いで返す惣倉。

 そんな惣倉を気にもしない男は言葉をゆっくりと紡ぎ、


「貴方をーーー殺す」


 殺意を表明した。