「ええ分かっていましたとも!」
チワワ男はそう言いながらブンッ!とナイフを横に払った。
「惣倉!?」
俺が言葉を掛ける前に、
「好き勝手してくれるなあ…」
惣倉は危なげなく後方に避けていた。
少しホッとしながら唐突に、
「貴方いいですねえ本当」
さっきの違和感の理由が分かった。
「…何が良いんですか?」
嫌そうな惣倉の声が聞こえる。
「初めはどうでも良かったんですよ。ガキの集団が何しようがどうしようがね」
「…」
チワワ男は熱を帯びた声で、
「戦場を彷徨い、流れに身を任せて辺境のこの国に来ましたが…しかし貴方と出会えた!」
バッと胸に手を当てて声高々に言う。
「動作に出ているんですよ!高貴な者が立ち振る舞いで他者を圧倒するかの如く、貴方の動き1つ1つに暗闇で生きていた者特有の動きが滲み出ている!」
「…」
「私は貴方に感じたのですよ!自分と、いや自分より勝る何かを!」
そうだ、あのカールとか言う変な奴と似た感じなのだ。
ナイフを耳に刺されても平然としていたあの異様さを思い出す。
「だからこそ、私は!」
狂気じみた語り口調と、チワワの造られた潤んだ瞳が男の異様さを演出している。
「…私は?」
男の熱意に反して冷めた物言いで返す惣倉。
そんな惣倉を気にもしない男は言葉をゆっくりと紡ぎ、
「貴方をーーー殺す」
殺意を表明した。



