兄さんは男の声を遮った。
決して大きな声では無い。
命令もしていない。
それなのに嫌でも相手を黙らせてしまう兄さんの重みのある声。
ーーー私は兄さんが決してあの天條より劣るとは思わない。
以前の兄さんが彼女に惹かれたのだって、綴ちゃんの言った通り、弱い訳ではない。
何より大事な私を守りたいが為に、彼女の様に強い存在を求めたからに過ぎない。
兄さんの存在は2対で1対だから、1対を求めた。
でも、今は。
「自分らみたいのを罰する為におるんや」
「…何言ってんだ!罰する?俺らを?ハハッ…!犯罪者は許さない!俺らが捕まえてやる!って事かア?幾らお前らが強かろうがな…」
倒れている男達の中の数人が立ち上がる。
少し甘かったなあと思っていれば、兄さんは徐に銃口を上に上げた。
「…っテメエまさか!」
「あほ、自分らみたいなことはせえへん」
片手で一切のブレなく、監視カメラを撃ち抜く。
バンバンッ!と大きな音を立てながら淡々と打った兄さんは、最後のカメラを打って「弾無くなった」と銃を放り投げた。
「お前ら馬鹿かよ銃使い切りやがって」
「そんなん使わんでも妹いるから平気」
そう、私がいるから。
肩をぐるぐると回す兄さん。
さっきのは足りなかったもんね…ああ久々だ。



