過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 兄さんは男の声を遮った。

 決して大きな声では無い。

 命令もしていない。

 それなのに嫌でも相手を黙らせてしまう兄さんの重みのある声。


ーーー私は兄さんが決してあの天條より劣るとは思わない。

 以前の兄さんが彼女に惹かれたのだって、綴ちゃんの言った通り、弱い訳ではない。

 何より大事な私を守りたいが為に、彼女の様に強い存在を求めたからに過ぎない。

 兄さんの存在は2対で1対だから、1対を求めた。

 でも、今は。


「自分らみたいのを罰する為におるんや」

「…何言ってんだ!罰する?俺らを?ハハッ…!犯罪者は許さない!俺らが捕まえてやる!って事かア?幾らお前らが強かろうがな…」


 倒れている男達の中の数人が立ち上がる。

 少し甘かったなあと思っていれば、兄さんは徐に銃口を上に上げた。


「…っテメエまさか!」

「あほ、自分らみたいなことはせえへん」


 片手で一切のブレなく、監視カメラを撃ち抜く。

 バンバンッ!と大きな音を立てながら淡々と打った兄さんは、最後のカメラを打って「弾無くなった」と銃を放り投げた。


「お前ら馬鹿かよ銃使い切りやがって」

「そんなん使わんでも妹いるから平気」


 そう、私がいるから。


 肩をぐるぐると回す兄さん。

 さっきのは足りなかったもんね…ああ久々だ。