過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 最もらしい事を言われて、兄さんも私もキョトンとして、ああと納得する。


「そうか普通はせやなあ」

「忘れとったね」

「漸くこっちの生活にも慣れて来て、こっちの楽しさも分かって来たから、俺らの普通はちゃうって事を忘れとったな」

「ねー」


 私もあっちっとこっちとの差異に大分悩んだけれど、綴ちゃんのお陰で少しずつ私も兄さんも慣れたんだよね。

 思い出したらほのぼのして来た。

 綴ちゃんってやっぱり不思議な子。

 こっちの異常性にも気付いているし、恐れているのにそれでも接し続ける優しい子。

 あっちにいるあの子に似ている。


「何がねーだ馬鹿にしてんのか!?」


 馬鹿にしたつもりはないけれど、勝手に怒り始めたドーベルマン。

 兄さんが呆れた様に、


「つーかアンタらこそ、こんなん使い慣れてるって事は元犯罪者か、傭兵上がりか…どっちにしろこんなけったくそ悪い場所におるんやったら、碌な出ちゃうやろう」

 
 そして、冷たく言い放った。

 男は、


「ハッ…御名答。俺は犯罪者の方。しかも人殺しだ」


 と開き直りながら馬鹿にされた分を返すかの如く、自分の犯した罪を揚々と述べる。

 大馬鹿ね、と心で男を評する。


「お前らぐらいの頃に人殺し、盗み、薬何でもやったけど法が守ってくれたからなァ?ああ!女を殺した事もあ、」

「…俺等はな」