過つは彼の性、許すは我の心 弐



「な、何で連れて来たんだ!?」

「いやあ聞いた方が早いからと思って」


 ダラリと力の抜け切ったゴールデンレトリバーマスク男を、手早く持っていた結束バンドで拘束。君は未来から来た猫型ロボットか。

 そしてバサリとマスクを剥ぎ取り、その胸倉を掴み上げ、露わになった厳つい男を何回かビンタし始める。


「つ、惣倉君?」


 惣倉君の奇行に声を掛けるが、彼は無言のまま攻撃し続ける。

 男は微かな呻き声をあげて、その瞼を開けようとし、絶句した。

 絶句したのは私だけでなく、


「…っ何だお前、ら」


 目覚めきった男も、惣倉君が自分の胸倉を掴む手とは反対の手を見て言葉を失う。

 カールさんを傷つけた小型ナイフだ。

 ま、まさか。


「危ない事は…!」

「先輩の前ではそんな事はしませんよ…ちょおっと危ない事はしますけど」


 ちょおっとって…。


 惣倉君は片手に持ったナイフを、男の眼前でチラつかせる。


「こ、こんな事をしてタダで済むとは思ってんじゃねえぞ!」


 気丈にも男は惣倉君に噛み付いているが、惣倉君には微塵の動揺も見られない。


「お前ら全員おしまい、」


 刹那ーーー男の顔面を横に切り裂かれる。

 私は思わず口を押さえた。


「ぎゃあああァアアあああ!!」

「今ここで知っている事を話せば命は助けてやる。でも、助けに誰かが入った瞬間俺は容赦なくアンタの命を奪う」