過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 突如として現れたシベリアンハスキーマスク男にしがみ付かれて、鉄将君の動きを封じられる。


「放せ!」

「大人しくしろ!」


 鉄将君もガタイがいいが、シベリアンハスキーも負け劣らずガタイがいいせいで中々拘束が解けないらしい。

 一応お坊さんスタイルの為に持っていた鉄将君の錫杖がコロンと床に落ちーー瞬間、


「グッ!」

「何しているんですか」


 やれやれ声と共に流れる様な動きで、惣倉君が錫杖を拾い上げ、シベリアンハスキーマスク男の顎辺りを突き、


「ガハッ…!」


 そのまま横面に錫杖を叩き込んだ。

 沈むシベリアンハスキーマスクの男。


「…」

「…」


 呆然とする鉄将君と私。


「ほら行きますよ」

「わ、分かっている!」


 時間が動き出した様に走り出す惣倉君と鉄将君。


「テメエ…やっぱり手を抜いていただろう!」

「テメエなんて…天條の若様の護衛がそんな言葉遣いしちゃ駄目ですよ?」

「ムカつくわ本当にムカつく!」


 鉄将君に好きな人がいなければ、ここで惣倉君の事を無自覚に好きになって、惣倉君が他の女の子とラッキースケベを起こしたら暴力振るう系のヒロイン(この場合はヒーローか?)になる展開だ。


 見たい…!王道も至高だよね!


「俺は暴力系ヒロインってあんまり好きじゃないんですよね。理由があれば別ですけど」

「あ、口に出てた?」