過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 息の上がっている鉄将君が選んだのは袈裟を着た深編笠を被るお坊さんスタイルで、初めて見た時は武闘派お坊さんぽくってカッコよかったんだけれど、時々角から現れる犬集団に捕まれ掛けては服を引っ張られたせいで寄れて所々千切れたりと、散々な様相になってしまっている。


「お前なんで息上がんねえんだよ!?」

「山籠りして修行してましたから」


 ケロリと嘘を吐く惣倉君。


「そうなのか…?」


 信じてるんじゃないよ。


「嘘だよ鉄将君」

「この…!」


 こんな時に騙される…と言うか鉄将君もこんな時によくそんな話出来るよ。


「待て止まれ!!」

「そっちに行かせるな!」


 背後にドックラン(むさい犬マスク集団)の群れが迫っていると思ったら、普通は出来ないと思うけれど…ある意味鉄将君も肝が据わっているなあ。


 そしてそんな事を考える私も大概呑気だなあと思っていれば、


「多くなって来ましたね。こっちが当たりだったかな」


 惣倉君は犬達を眺めてそんな事を言う。


「…どういう事?」

「セキュリティが増えているって事は、こっちに来て欲しくない《《何か》》があるって事なんですよきっと」

「ほう」

「そっちに行かせるなって言ってたし、そう言う事なんじゃないかと」

「あ…なるほど」


 合点が行きました。

 その時、


「うお!」

「鉄将君!?」

「捕まえたぞ貴様ら!」