………先ずは私が足元掬われない様にしなきゃ。
気を引き締め直して歩けば、
『渚君?』
先頭を歩いていた渚君が止まる。
『…いるな』
隣を歩く惣倉君の視線が、人気のなくなった廊下の先に留まっている。
『何あの集団』
渚君の隣にいた夏波ちゃんの訝しむ声が聞こえ、私も惣倉君の向いている方に視線を移すと、
『犬?』
多種多様な犬のフルマスクを被ったスーツ姿の群衆が、此方を見て話をしている姿が目に入る。
『あんまり良い感じじゃ…ないよね』
『ですねえ』
惣倉君の呑気な同意が隣から聞こえたが、うんやっぱり変だ。
て言うか。
『近付いて来てない?』
群衆が近付く事に、彼等のガタイがとんでもなく大きく、平凡の極みである私でもこの人達が、単純に《《強い》》事が分かる。
『なんや』
『…』
渚君の前に犬の中でも、かなり大きな男が前に出て来る。
ドーベルマンのマスクだ。
物々しい空気に1人ビクビクしていれば、
『申し訳ないが、貴方方には帰って頂く』
『はあ?』
渚君が怪訝な声が聞こえた。
『貴方が海祇である事は知っているが《《多く》》支援して下さっている天ヶ衣様からの御命令だ。帰れ』
『あのあほんだら…』
忌々しげに呟く渚君の後ろで、私も似た様な感想を持った。
何かいつかやらかすと思っていたけれど…!
あのスーパーチャラ男をバットでフルスイングしてやりたい…!



