過つは彼の性、許すは我の心 弐




………先ずは私が足元掬われない様にしなきゃ。

 気を引き締め直して歩けば、


『渚君?』


 先頭を歩いていた渚君が止まる。


『…いるな』

 
 隣を歩く惣倉君の視線が、人気のなくなった廊下の先に留まっている。


『何あの集団』


 渚君の隣にいた夏波ちゃんの訝しむ声が聞こえ、私も惣倉君の向いている方に視線を移すと、


『犬?』


 多種多様な犬のフルマスクを被ったスーツ姿の群衆が、此方を見て話をしている姿が目に入る。


『あんまり良い感じじゃ…ないよね』

『ですねえ』


 惣倉君の呑気な同意が隣から聞こえたが、うんやっぱり変だ。

 て言うか。


『近付いて来てない?』


 群衆が近付く事に、彼等のガタイがとんでもなく大きく、平凡の極みである私でもこの人達が、単純に《《強い》》事が分かる。


『なんや』

『…』


 渚君の前に犬の中でも、かなり大きな男が前に出て来る。

 ドーベルマンのマスクだ。

 物々しい空気に1人ビクビクしていれば、


『申し訳ないが、貴方方には帰って頂く』

『はあ?』


 渚君が怪訝な声が聞こえた。


『貴方が海祇である事は知っているが《《多く》》支援して下さっている天ヶ衣様からの御命令だ。帰れ』

『あのあほんだら…』


 忌々しげに呟く渚君の後ろで、私も似た様な感想を持った。

 何かいつかやらかすと思っていたけれど…!

 あのスーパーチャラ男をバットでフルスイングしてやりたい…!