渚君の無感情で淡々とした言い方は、冷たい様に聞こえて、自分に苛立っている様にも聞こえた。
例えば、私達が通報して警察が来たら、彼等達はハッピーエンドになるのっかって言う話になるんだけれど…それは利用者達が社会的地位の高い人しかいないって点で、ほぼ不可能な話で。
通報した事を揉み消されるならまだいい。
通報が失敗してその末に、証拠を消そうとしたら?
証拠である彼等に何もしないなんて誰が言える?
こんな非合法な場所を造る様な連中がそこまでしないなんて何で言い切れる?
………そこまで考えると何も出来ないと思ってしまった。
私以外は、将来立派な家業を継ぐんだろうけれど、今はただの高校生で、やれる事も限られる。
『…』
言い訳…だよね。
つらつらとどうにもならない事を考え続ける私は、どうしようもない奴なんだろう。
『先輩やれる事をやりましょう』
視線は真っすぐ前を向く惣倉君。
『うん…』
そうだよね、獅帥君1人すら助けられない私がどうこう言うのは置いておこう。
今は獅帥君を探す事に集中集中。
『先輩、後空気吸い過ぎない様に』
『へ?』
『お香みたいな、甘い匂いするでしょう?』
『うん』
『薬混じっているんで気を付けてください』
『え』
『この手の場所は多いですよこう言うの。だから気を付けてください』



