過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 各々カールさんが準備したモノに身を包み、私達は入り口にいたベネチアンマスクの男に声を掛けた。

 カールさんが一緒に来なかった事を怪しまれてしまったが、渚君の名前を聞いたらニッコニコで建物へとお入り下さいと招かれて…。


「何で追われているの!?」


 紛うことなき逃走中!賞金なし!捕まったら社会的に終わる!今すぐリタイアしたい!

 現在進行形で追われています、私達。

ーーー初めはのんびりしていた。

 贅を凝らして造られた黄金の長い廊下や煌びやかな調度品、アラブや洋風ファンタジーの王宮内を彷彿とさせる部屋、甘くて気分がふわふわする様な匂いとか、よくもまあこんだけ凝って造ったもんだと感心した。

 ただ露骨な豪華さと当然と行われる《《行為》》に眉を顰めてしまったが、それよりもっとビックリしたのが、


『あれ?』

『先輩どうしました?』

『あの人達、顔が見えてて大丈夫なの?』


 この場所は顔が見えない事が前提で、私達もそれぞれ顔が見えない扮装をしている。

 だから顔が見えている人達は大丈夫なのかと思ったんだけれど…。


『売られて来たんでしょうね』

『う、売られた?』

『こう言う所で顔を晒された上にあんな事をしてるって事は、そういう事やろうな』

『…』