過つは彼の性、許すは我の心 弐



「人間とは生物としては弱い癖に、アレもコレもと欲しがった結果、貴方方の神も私も産まれたのですよ」


 相槌を打つ気力も無い。

 真実どうであれ自分を悪魔を宣う男の語りを、逃げ場の無い車内で聞かせられるのは残った事を後悔させられる程息の詰まるものだった。

 早く彼女達が帰って来ないかと建物の入り口の方に視線を移した瞬間、


「私は悪魔として強烈に惹かれました。完成しつつある器…本質の話をしましたね」

 
 急に饒舌な男の言葉が止まって、男の方を見て後悔する。

 子供が見たらきっとトラウマものだ。

 男はとびっきりの笑顔で、劇のフィナーレを語る。


「たった1つの目的を成し遂げる為に、幾千の命と狂気を重ね、漸く実った結晶…暗闇よりも深き場所から出づる、」


 勿体ぶった言い方をして、


「ーーー 殺し(・・・)そう言う存在なのですよ」


 荒唐無稽な、しかし、男の在り方がその妄言に真実味を持たせたその言葉に、唾を飲み込んだ。


「貴方方の神と可愛らしい彼女が無事(・・)に戻って来てくれればいいですね」


 ああ、やっぱりついて行けば良かったか。

 ただ男の語った人風情の自分は、兎に角ソドムへ突入した彼等…彼女の身を案じるしか無かった。