過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 月の家は所謂、五曜家内で1番の汚れ役(・・・)をやっていたと言う。

 天條に関わる全ての汚れを掃除し、管理する特殊な家。

 その家の役割故に、他五曜家でも、天條の分家でも嫌われ者。

 一族内の構成も秘密な部分が多く、横の繋がりが多い天條に関わる家達の中でも、その実態を知っている者は少ないと言われている。

 その月の家が重用し、主にその仕事を任せていた相手が惣倉家。

 自分の祖父以上の世代は、なまはげの様に悪い事をしたら惣倉に言いつけるぞと言われていたらしいが…。


「いえ影刀様を表現するには妥当ですよ」

「…妥当とは思えないけどな」


 火でも、木でも、毒でも、牙でもない。

 確かに只者ではないだろうが、好きな先輩と好きな話で盛り上がる姿は、年相応の子供にしか見えないからこそ、とてもじゃないが、羅列された言葉に見合う様な存在には思えなかった。


 隣の男はクッと笑う。


「綴様が特殊なだけで、影刀様の本質は何も変わりありませんよ」


 暗い車内のせいで男の顔が見えづらく感じる。

 建物の入り口の淡い光しか入って来ないせいでそう見えているだけか、それともこの男の奇妙な在り方のせいでそう見えているのか。

 自分が今話している相手は果たして人間なのか?


「…本質?」


 夏の車内で鳥肌が立つ。