過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 思い出せたのも、彼女が自分の思いを拾ってくれたから。

 何となくいつも持ち歩いていたソレ。

 未だに自身につけられる事はないけれど…。

 いつか。


『付けられるといいね』


 笑ってくれた彼女の言う通りになって欲しい。

 車内の暗がりでも分かる自分の掌の中の物の形を指でなぞりながら、彼女との温かな思い出に浸る。

 すると、


「ポインセチアのイヤリングですね」


 隣から声が掛かった。

 運転席に目を向ければ男は嘘臭い笑みで、自分の持つ物の名前を言った。


「しかも白とは」


 ハハッと笑う男の声に不快だと感じ、パッと仕舞う。

 そんな自分の姿を見てまた笑う姿は、馬鹿にしているのか、愚かだと笑っているのか。

 どっちにしろ不愉快なのは変わりない。


「…さっき惣倉の事を何であないな言い方したんや」


 これ以上イヤリングの事については触れられたくなかったので、話題を別に移す事にした。

 
「あんな言い方とは?」

「…アンタがあの時に羅列した言葉、全部神話の話やろ」


 ヒノカグツチ、ヒュドラノドク、ヘズノヤドリギ、フェンリル。

 しかも。


「全部縁起悪過ぎやろう」


 全部が神の死因(・・・・)となったモノ達だ。

 いやこの場合適切なのか。

 そう言えば、惣倉自体が縁起が悪い扱いだったのを思い出す。

 昔四葉にーーー惣倉は五曜家ではないが、あの()の家に仕える家だと聞いた事がある。