過つは彼の性、許すは我の心 弐



 降りきった先で再度車を発進させると、暗い駐車場で明かりの見える建物の入り口付近にいた人物が、近付いて来る。

 カールさんが運転席の窓を少しだけ開けると、近付いて来た人物の顔が少し見えてーーー驚いてしまった。


「ようこそおいで下さいましたカール様。此方にお止め下さい」

「分かりました」


 派手なベネチアンマスクを付けているその男の案内の元、カールさんは指定された場所に停車する。

 派手なベネチアンマスクの男は軽くカールさんと話をした後に、入口の方まで戻って行く。


「アンタここの常連やったのか」


 暗がりでも渚君の不快さが伝わって来る。

 それにいつもの嘘臭い笑みで返しているだろうカールさんは、


「さあ皆様。不道徳と退廃に満ちた楽園へ着きました。準備は影刀様と綴様の背後にあるカーテンの後ろにありますので、ご自由にお使い下さい」


 私の背後を手で差し示し「いってらっしゃいませ」と座りながらも綺麗にお辞儀をした。

 そのカールさんの芝居がかった動きに、ゴクリと唾を飲み込む。

 いよいよだ。

 私の緊張が伝わったのか、そっと惣倉君が自身の手で私の手を包む。


「先輩大丈夫です。必ず先輩を天條先輩の元まで連れて行きます」

「惣倉君…」


 こんな時でも私の心配をしてくれる惣倉君。